近年、若者の間で話題となっている転職トレンドのひとつに「ジョブホッパー」と呼ばれる用語が存在します。
ジョブホッパーとは、簡単に言うと「転職を何度も繰り返す人」を指します。
今回は、「ジョブホッパー」の概要やメリット・デメリット、転職を成功させるために気をつけるべきことについて解説します。
「ジョブホッパー(job-hopper)」とは、冒頭で述べた通り、短期間に転職を何度も繰り返して、ひとつの仕事になかなか定着しない人のことを言います。
「ホッパー(hopper)」とは、辞書によると「跳ぶ人や物」を意味します。さまざまな仕事を跳び回る(ジョブホッピングする)ことから「ジョブホッパー」と呼ばれています。
では、具体的にどのような人がジョブホッパーに当てはまるのでしょうか。
ジョブホッパーに該当するどうか明確な要件はありませんが、仮に転職回数で当てはめるならば、以下の転職回数を持つ人はジョブホッパーと見なされる可能性が高いです。
また、上記の転職回数に加えて以下の特徴に当てはまる人も、よりジョブホッパーに該当する可能性が高いです。
さらに、どちらかと言うとジョブホッパーは若年層に対して用いられるワードとして認識されています。
そもそも世の中に一体どのくらいの転職者がいるのか、まずは統計的な数字から見ていきましょう。
総務省統計局「労働力調査」による年次の推移を見ると、転職者の数は2006年および2007年の346万人をピークに、2008年以降に減少しています。これはリーマン・ショックの影響によるもので、2010年にかけて大きく転職者数が減少しています。
しかし、2012年以降は徐々に増加を続け、2019年には351万人と、2002年以降で過去最多の転職者数を記録しています。
新型コロナウイルスの影響で、2020年は減少したものの、近年において転職の数が増加傾向にあることがグラフから見てとれます。
※2011年除く
参照:総務省統計局「労働力調査」より作成
年齢階級別の転職者比率※を見ると、15~24歳および25~34歳では、近年ほぼ横ばいで推移していましたが、2019年は前年に比べて大きく上昇し、2008年以来の高い水準となっています。
※就業者に占める転職者の割合
また、いずれの年次においても15~24歳および25~34歳の若者世代の転職者の比率が最も高いことが見てとれます。
※2011年除く
参照:総務省統計局「労働力調査」より作成
若者世代の転職者を示すように、近年の大卒就職者の3年以内の離職者数を見ると、どの年次の卒業者も3年以内の離職率が3割を超えていることがわかります。
つまり、3人の1人の割合で大学を卒業して就職してから、3年以内に転職などの理由で離職していることになります。
参照:厚生労働省「新規学卒者の離職状況」より作成
若者の転職が多いことが明らかになったところで、なぜ今ジョブホッパーが増えているのか。ジョブホッパーになるメリットから探ってみましょう。
具体的には、以下のメリットが考えられます。
それぞれについて、見ていきましょう。
ジョブホッパーは、転職によって仕事を転々とするため、ひとつの仕事を長く続けるよりも、幅広い業務経験ができ、また学習の機会が多いと言えます。
仕事を通じて豊富な経験を得ることで、経験やスキルを磨くことが可能となります。
また、転職によって得られる経験の多さは、限られた人生において、精神的な豊かさを育む源にもなります。
コミュニケーション力が磨ける点もジョブホッパーのメリットです。
ひとつの職場で、限られた人間とのみ接しているとコミュニケーションに偏りが出てしまいます。
一方で、転職を重ねることで、より多くの異なるタイプの人間と出会えるので、コミュニケーション能力を磨けます。
仕事は、人生の大半を占めるものです。職場で人間関係などの悩みを抱えていると、大きなストレスになります。
たとえストレスを感じていないと意識していたとしても、人は潜在的に知らずの内にストレスを蓄積してしまうものです。
一説には、3割近くの人が人間関係によるストレスを理由に退職をしているとも言われています。
転職することで、蓄積されたストレスが完全にリセットされるため、悩み苦しむこともありません。
人脈を広げることができる点も、ジョブホッパーの大きなメリットのひとつです。
転職を繰り返すと、必然的に多くの人と知り合うことになるので、その分人脈が広がります。
起業をするときや転職、他にも多くの場面において、人とのつながりは役に立ちます。
たとえば、将来的にフリーランスとして独立することを視野に入れている場合、、人脈が広い方が取引先をスタート時点から得られやすいというメリットがあるでしょう。
続いて、ジョブホッパーのメリットについて解説していきます。
具体的には、以下のデメリットが考えられます。
それぞれについて、見ていきましょう。
同じ職種や業種といったように、キャリアに一貫性を持ってスキルアップのため、転職を繰り返している場合は何も問題ありません。
一方で、転職に一貫性がない場合、バラバラの業務を限られた期間しか経験できないため、スキル形成が中途半端になる可能性があります。
特に1~2年の短期間で転職を繰り返すと、スキルがほとんど身につかず、周囲からスキル能力の低い人材と思われるかもしれません。
スキルが身につかず中途半端な人材になると、転職先での給与などの条件・待遇が下がっていくことも考えられます。
よく勘違いしやすいのが、転職すると必ずしも給与が上がるというわけではありません。中には転職に失敗して年収が大きく下がったというケースも数多くあります。
さらに言えば、スキルがたとえ完璧に身についていたとしても、年収が確実に上がるとは限りません。
ジョブホッパーは、職場を渡り歩くことによってコミュニケーション能力が高くなる反面、深い人間関係を築きにくい傾向にあります。
ひとつの職場に長期間在籍しないため、当然ながら人間関係を築く時間が限られてしまいます。
また、転職を繰り返していると、雇用する立場や一緒に働く同僚から「どうせ、すぐに辞めてしまう」という見方をされ付き合いを避けられることも考えられます。
ある程度の付き合いでも、中には上手く人間関係を築ける人もいるかもしれませんが、やはり深い人間関係を構築するには、それ相応の時間が必要と言えます。
実際に、企業の採用担当者は転職の回数が3回を超えると、採用時の評価として重視するというデータがあります。
ただ、転職の回数だけを気にしているのではなく、年齢や経験によって判断します。本人に聞いて妥当性や要因を確認した後に判断しています。
転職回数が多いから不採用になるのではなく、転職理由やスキル・経験などに気になる点がある場合に問題になると考えると良いでしょう。
ここからは、ジョブホッパーが転職成功させるために必要なことについて解説していきます。
具体的には、以下のようなことが必要と考えられます。
それぞれについて、見ていきましょう。
ジョブホッパーは自己分析が足りずに、転職を繰り返してしまう傾向にあります。自己理解ができていないがため、自身にマッチしていない職種を選んでしまったり、興味のない業界に進んでしまったりします。
まずは、徹底的に自己分析をして、自分自身の理解を深めましょう。得意・不得意や長所・短所、好きなことや興味のある分野などをあらためて洗い出すと良いです。
また、これまでのキャリアを振り返ることも重要です。自己分析やキャリアの棚卸しを経ると、職歴の一貫性が見えてきます。
たとえば、職種や業界が異なっても、軸となっているスキルは存在します。
サービス業を中心に転職してきた人は「コミュニケーションを取るのが得意」だという共通項が見つかります。こういった一貫性や共通項を見つけることで、職種や環境などを転職時に選択する際の大きな参考になります。
さらには、自己PRに活かすこともできるでしょう。
ここで言う専門スキルとは、各分野に特化したスキルのことを指します。
たとえば、営業力や言語能力、プログラミング能力などが該当します。
企業は、こういった主軸となるスキルを持っている人材に、価値を見出します。企業は営利を追求する集団のため、何らかの貢献が見込め込めないと必要な人材として評価しません。
評価される人材になるためには、やはり企業が求めるような専門的なスキルを得る必要があります。
「これからどうなりたいか」「何をやりたいのか」というキャリアプランを明確に設計するようにしましょう。
ジョブホッパーは、さまざまな仕事を経験してきたからこそ、自分がどんな仕事に向いているか、実力を発揮できるのかが理解しやすいはずです。
これまでの経験を決して無駄にせず、しっかりとキャリアの棚卸しをして将来像を設計すると良いでしょう。
また、これまでキャリアプランを真剣に考えたことがない人は、キャリアカウンセラーなどに相談することもひとつの手です。
終身雇用が崩壊した昨今においては、転職を行うことは当たり前になってきています。転職自体を決してネガティブに捉える必要はありません。
世間が持つ転職に対するイメージも、多様なワークスタイルが確立している現代社会の中で様変わりし、転職は自分の理想を叶えるための手段とされています。
他方で、一貫性のない転職を過度に繰り返すことは、キャリア形成に有効なのかと問われれば、決して「Yes」とは言えないでしょう。
やはり転職は、人生を左右するものなので、安易に考えずに慎重に行うべきものです。ジョブホッパーの良し悪しを決めるのは貴方次第です。
今回は、「ジョブホッパー」の概要やメリット・デメリット、転職を成功させるために気をつけるべきことを解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
この記事が、転職を行う上での参考になれば幸いです。
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